久しぶりに面白い本であった。 「イノベーションのジレンマ」の著者ハーバードビジネススクール教授クリステンセン氏による最新刊。
「ジョブ理論」とは
「ジョブ理論」というのは、今までのマーケティングで使われてきたような顧客属性(性別・年齢・年収・居住地域など)からプロダクトを売るのではなく、「顧客が片付けたいジョブ」に基づいてプロダクトを売るべきだという話。
顧客が片付けたい「ジョブ」の定義が、ジョブ理論の根幹にあって、
顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるというものだ。この「進歩」のことを、顧客が片付けるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。
と定義されている。
なんのこっちゃという感じだけど、本書の中の例として出てくるのは、
退屈な車通勤中に、小腹を満たしかつ運転の邪魔にならないものを食べたい → ミルクシェイク
今日中に部屋の中の家具を一通り揃えてしまいたい → IKEA
一人暮らしの人が健康(と口うるさい母親)のために、野菜を手軽に取りたい → V8という野菜ジュース
とか。
野菜ジュースの例でいうと、今までの考え方だと清涼飲料水のカテゴリの中で勝負してしまうが、ジョブ理論の考え方だと「野菜を手軽に取りたい」人がターゲットになるから、野菜を買う人・サプリを買う人にまでマーケットが広がると。 逆に、いくら高機能であっても、顧客が片付けたいジョブに合わないとまったく売れない。
「ジョブ理論」の先
おそらく重要なのは、「ジョブ理論」で成功した先で、著者も述べている。
そして、最初の成功をもたらしたジョブへのフォーカスを失う。さらにまずいことに、多くの顧客向けに多くのジョブを片付けようとすれば、顧客は混乱し、本来、ジョブを片付けるのに適さないプロダクトを雇用し、のちに苛立ってそのプロダクトを解雇することになる。
一つがうまく行くと、余計な機能を追加したり、「○○プラス」とか「○○2」とか派生商品を作ったりしがちだけど、そんなことをすると顧客が混乱しちゃうよと。自ら負け戦を始めてるようなもんだそうです。
マーケティングというよりは、ビジネス全般に役に立ちそうな本。
ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
- 作者: クレイトン M クリステンセン,タディホール,カレンディロン,デイビッド S ダンカン,依田光江
- 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
- 発売日: 2017/08/01
- メディア: 単行本
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