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【書評】暇と退屈の倫理学|退屈は不幸なのか?刺激がある方が幸せ?

暇じゃないけど退屈だ。暇だし退屈だ。

「そもそも退屈とはなんなのか?」「退屈から逃れることはできるのか」などなどの疑問を、哲学的に解説している本。

著者も本の中で

暇があるとか、退屈できるなどとはなんと贅沢なことよ。そんなことを考えている暇(!)があったら、今労働者が強いられている非正規雇用という問題を考えるべきだ、と。

と言ってるけど、誰でも「なんか暇だな」とか「なんか退屈だな」と思ったことはあると思うんですよね。

一応「暇」と「退屈」は別モノとされていて、暇=時間的なもの、退屈=製品的なもの、となっている。

だから、毎日仕事が忙しくても「なんとなく退屈だ」と思ってしまう人もいると。

退屈だから事件を求めている

こういう考え方って現代っぽい。 たぶん、毎日同じ時間に会社に行って同じ仕事して同じ時間に帰るサラリーマン、みたいなイメージ。

だから人は刺激を求める。簡単な刺激だと、ちょっとTVでやってたレストランに行くとか映画見るとか。 ただ、こういう刺激は一方的に与えられるものだから、退屈を解消してくれることは少ない。

「退屈だなー、明日電車事故起こさないかなー、地震でも起きないかなー」と思ってしまうらしい。刺激を求めるというか、事件を求めるらしい。なんか映画の冒頭シーンにありそう。

で、どうすればいいのか?

結論として、どうすればいいのか、というのはこの本の中では語られていない。 筆者も最初からこの本に結論はないと言っています。

結局、人間は現代的な生活をしていると「退屈」になるようにプログラムされているらしい。「退屈」を感じたときに、各々がどういう「刺激」を求めて行動するのかも、各々で違う。

だから、それぞれ考えていきましょうね、という普通の結論になってしまいました。

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

AIがベストと判断したSF小説─『ザ・サークル』

ザ・サークル

ザ・サークル

以前読んだ『ベストセラーコード』でAIが選んだベストな1冊がこの本だった。実際、売れているらしく映画化もされている(エマ・ワトソン、トム・ハンクス主演、日本公開は10月)。気になって読んだ。

Googleの資金力、FacebookのSNS、AmazonのEC網、Appleのプロダクト力みたいなヤバイ会社「サークル」の中でのお話。過剰なテクノロジーの進歩や過度なソーシャルのつながりっていかがなもんでっしゃろ?という問題提起をしている作品(たぶん)。

すべてが正確にトラッキングできるカスタマーサポートシステムとか、究極のマッチ度を誇るデーティングアプリとか、2年間受電なしで8K品質の動画を配信し続けるカメラとか、いろいろぶっ飛んでるモノが出てきますが、あと20-30年したら実際に出来てきそうで微妙に怖い。SF度絶妙。

発明ってのは望む・望まないに関わらず不可逆なものだなあというのをすごい思った。ケータイを作ったら休日にうざい上司から電話がかかってくるようになるし、SNSが発明されればうっとしいと思いながら上司の投稿にいいね!をしないといけないのですよね。なんかすごい上司に悩まされてるみたいですけどそんなことないですよ。原爆とかも作っちゃたら使っちゃうしね。

高校(高専)生のとき技術倫理って授業があって、技術者にはパターナリズム(父親のように考え本当には発明するべきかどうか考えること)が必要だって習いました。そんなことを思い出した一冊。

AIがベストだと判定したということでえらく期待して読んだのだけど展開がダラダラしていてあんまりだった。ベストセラーコードに書いてあった「テーマに一貫性があり、ストーリー(プロット)にメリハリがあって、読みやすい文体で、主体性のあるキャラクターが主人公である」という条件にはまあまあマッチしている感じもあったのだけど、やっぱり翻訳が入るとダメなのかも感?読む価値はある。

【書評】倒産劇の真実「あの会社はこうして潰れた|帝国データバンク情報部 藤森徹」

倒産する会社のパターンが見えてくる

帝国データバンクという会社は聞いたことあるけど、「情報部」というところは企業の倒産情報の調査なんかをしているらいしいです。

倒産情報を調べるときに張り込みとかもしているみたいで、泥臭い。がんばれ。

企業が倒産するときは、いくつかパターンがあって、

  • 産業構造の変化

呉服屋とかデパートの卸とかゲームセンターとか

  • 本業以外に手を出して失敗

シナジー効果のない事業を買収して大失敗とか、投資で大失敗とか

  • 急拡大で失敗

先行投資しすぎて回収できず負債

  • 後継者選びで失敗

同族経営とか老舗企業とか、どら息子パターン

倒産する前に気づかないのか問題

1つの企業の話で3ページずつくらいなので、読みやすい。

こういう経緯だけを読んでると、なんで経営者は途中で気づいたり引き返そうと思ったりしなかったのかな、と不思議に思う。 もう後戻りできないところまでいっちゃったのか、外野だから気づけるだけなのか。

危ない会社と取引するのも就職するのもイヤなので、こういう本でヤバそうな会社の勉強をしておくといいかもです。

あの会社はこうして潰れた (日経プレミアシリーズ)

あの会社はこうして潰れた (日経プレミアシリーズ)

【書評】理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件ー理系脳=頭がいい人の条件?

今(2017/8/25時点)で売れてる新書ということだったけど、なかなかひどい内容だった。

理系脳・文系脳とは?

これからの時代は理系脳じゃないと、お金を稼げない、AIに仕事を奪われちゃうぞとのこと。

で理系の条件は4つあり、

  1. 新しいものに興味がある・変化が好き
  2. 刹那主義で未来志向
  3. コミットの範囲が明確
  4. コミュニケーションが合理的

だそうです。 まあこういう人の方が仕事はできそうだし納得。

そもそも大学での理系・文系は関係ないらしい。理系学部出身でも文系脳はいる。まあそうですよね、たまたま国語より数学の方が成績よかったとかだから。

謎のディスり

そして、文系脳の行動パターン例で挙げられてたのが、

・SNSで「今日のランチおいしかったぁ」と投稿 ・iPhone5Sをまだ使ってる ・接待とかの仕切りがうまい

これは極端な例すぎるのでは??と。 iPhone7買うお金の余裕がないと理系脳になれないのかい?接待スキルって今の世の中でもけっこう大事だよ?と疑問だらけ。

さらに、イーロンマスク知ってたら理系脳で、ハンナアーレント知ってたら文系脳とか、謎のロジック。

年収800万円以上の人はイーロンマスク知ってる率が高いっていう表が出てたけど、ソースもN数も無し。

統計からやり直せと思いました。

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件 (朝日新書)

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件 (朝日新書)

こちらで統計学を勉強した方が何倍もよい。

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

【感想】サトコとナダ

日本人とサウジアラビア人の女子大生がルームシェアしてる話。イスラム文化が気になってそれっぽい本を読んだのだけどぜんぜん頭に入ってこなくて、こういうライトなのから入ったほうが良いのかもと思い買ってみた。

ライトなとこからイスラム文化を知れてよかったんだけどいかんせんちょっとライトすぎた。いろんなエピソードがあって話としては面白いです。

サトコとナダはぜんぜん違う文化を持ってるんだけど仲が良いんですね。で、むかしベトナムでチラッと働いていたことがあって、みんなぜんぜん言葉通じないんだけど、不思議なものでその中でも気の合うやつと合わないやつがいたなあというのを思い出した。文化とか実はあんまり関係なくて、気が合うやつとは気が合うし、気が合わないやつとは文化が同じでも合わないんや。

どうでもいいけど、こういう異文化交流系の本だとゼッタイ日本のアニメ好きキャラが出て来るのな。エピソードとして描きやすいからってのはあるんだろうけど日本のアニメってやっぱ人気なんだなあ(小並感)。

内容が薄いので感想も薄くなってしまった。や、面白いんですけどね。

サトコとナダ 1 (星海社COMICS)

サトコとナダ 1 (星海社COMICS)

【書評】財務3表一体理解法

この前読んだ「ダークサイド・スキル」にビジネスマンたるもので財務3表くらい読めなくてはならぬ!と書いてあったのを真に受けて読んでみた。初版のやつと増補改訂版というのがあったのだけど、増補改訂版は微妙というレビューが目立ったので初版の方を読んだ。メルカリで300円で投げ売りされてた。

www.1mbr.net

入門書してGOODな1冊

文体は読みやすく、表現もわかりやすくてよかったです。

  • PL(損益計算書)
  • BS(賃借対照表)
  • CS(キャッシュフロー計算書)

財務3表とはそもそも何なのか、実際のビジネスでどんな数字がそれらに反映されるか、理論と全体像 → 実戦と詳細 の構造になっていて理解しやすい。それなりのビジネス経験が溜まってきた30代が読めば、3表から会社の動きを予想できるようになると思う。まさに入門書としてGOODな1冊でした。

主張が差し込まれる具体例が好き

具体例は漆器を海外向けに販売する副業をやるという設定で、その中で3表がどんな動きをするのか説明されている。じゃっかんストーリー仕立てになっているのだけど、ちょいちょい著者の主張を織り交ぜくるのが個人的には好きだった。

世の中は縁でつながっています。これからも一つひとつ、誠実に仕事をしていこうと皆さんは心に誓いました (初めて商品が売れた場面)

 

そんな人間にも責任を負わせる日本の金曜慣行に強い憤りを感じました (弟に借金の連帯保証人になってもらう場面)

などなど。そのへんもあり、飽きずに読めて良かったです。

【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)

【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

【書評】中東から世界が崩れるーイランの復活、サウジアラビアの変貌|高橋和夫著

謎の中東

ISと内戦と石油王のイメージしかない中東のことをもうちょっと知りたくて買った。

元々あったイメージと読後のイメージの変化だと、

  • イラン「なんか独裁政治っぽくてヤバそうな国」→「実は間接的民主制が取られていて、歴史も文化もあるっぽい国」

  • サウジアラビア「石油王のイケてる国」→「石油王はいるけど、国としてはそれほどイケてない国」

になった。 TVやニュースの報道だと偏りがあるでしょうか。イランはイメージアップ、サウジアラビアはイメージダウンしてしまった。 ただサウジアラビアの王族は何千人もいるらしいので、石油王と結婚して玉の輿というのはいい夢かもしれない。

なんでいつも争ってるのか?

ニュースで見るたびになんでいつも内戦とかテロが起こってるのかと思ったが、一応理由的なものとして、

  • 世界大戦後に、イギリスやフランスが実際の民族や宗派の区切りを無視して、国境線を作っちゃったから領土争いが起こっている

  • さらに、アメリカとかが民主化を進めるときに負けちゃった人達・あぶれちゃった人達が、自分たちの天下を取ろうとして戦ってる

らしい。 印象としては、自分たちの民族の誇りとか領土を守るために戦ってるのだろか。とにかくシリアだのレバノンだので、いろんな組織がいろんな国のバックアップを受けて戦ってるので、理解が難しい。

ついでに、平和な島国の日本に生まれた自分には、なんでそんなに戦いたがるのか理解が難しい。

ただ理解できないなりに、事実を知るのは大事ですね。